株式に譲渡制限をつける定款変更への対抗策

会社の発行する株式の全てに譲渡制限を設けるとの通知が届きました。譲渡制限株式となると株式の譲渡が自由にできなくなるので反対なのですが、どのような対抗策がありますか。

譲渡制限に関する規定を設ける定款変更阻止に向けた行動

譲渡制限に関する規定を設ける定款変更に反対であれば、他の株主へかかる定款変更に反対するように働きかけ、定款変更の阻止を目指すことになります。譲渡制限に関する規定を設ける定款変更を行うためには、議決権の3分の2以上の賛成だけでなく、議決権を行使できる株主の半数以上の賛成も必要とされていますので、株主名簿の閲覧又は謄写の請求を行い(会社法125条2項1号)、定款変更に反対の株主が一人でも増えるように交渉等を行うことが必要です。

他方、譲渡制限に関する規定を設ける定款変更が株主総会で否決される見通しがたたない場合には、当該定款変更が株主総会で承認された場合の対応についても検討しておくことが必要です。譲渡制限に関する規定を設ける定款変更に反対の株主には、会社に対し、所有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができますが(会社法116条1項1号)、株式買取請求を行うための要件が定められており、かかる要件を欠くと株式の買取請求を行うことができなくなります。そのため、株主総会で譲渡制限に関する規定を設ける定款変更を承認させないための活動を行いつつ、万が一、かかる定款変更が承認された場合に、株式買取請求権を行使するのか否かという点を検討し、株式買取請求権を行使する決断をした場合には、株式買取請求を行うことを前提とした対応もとる必要があります。

株式買取請求を行うための手続き

株主総会に先立つ反対の通知と株主総会での反対

譲渡制限に関する規定を設ける定款変更に関する議案に反対する旨の通知を株主総会に先立って会社に通知し、株主総会において当該事項に反対することが必要です(会社法116条2項1号)。株主総会に先立って反対通知を行ったことを立証する観点からは、株主総会に先立つ反対の通知は内容証明郵便で行うことが望ましいと思われます。また、代理人に議決権行使を委任する場合には、当該代理人が現実に議決権行使しないリスク等もありうるため、株主総会には自ら出席して当該議案に反対するか、信頼できる代理人(かつ定款等で代理人資格が株主に限定されていれば、当該代理人資格の要件を満たす代理人)に委任するなどの対応が望ましいと考えます。

なお、議決権行使書が送付されてきた場合には、実務上は、反対の部分に丸をつけ、コピーをとったうえで、書留等によって会社に送付する方法などが見受けられます。

株主買取請求

定款変更の効力発生日の20日前の日から前日までに、買取請求に係る株式の数を明らかにして株式買取請求を行うことが必要です(会社法116条5項)。また、株券が発行されている株式の場合には、当該株式にかかる株券を会社に提出することが必要となります(会社法116条6項)。

株式買取請求をした株主は会社の承諾を得なければ、株式買取請求を撤回できなくなります(会社法116条7項)。価格についての協議が整わず、効力発生日から60日以内に価格決定の申立てがない場合には、株式買取請求を撤回することができます(会社法117条3項)。

会社との協議(協議が成立した場合)

株主と会社は、株式の価格について協議し、協議が成立した場合には、会社は効力発生日から60日以内に代金を支払わなくてはなりません(会社法117条1項)。

株式買取価格決定の申立て

効力発生日から30日以内に協議が整わない場合には、当該協議期間の満了日から30日以内に裁判所に対して価格の決定の申立てをすることができます(会社法117条2項)。会社は、裁判所の決定した価格に対し、効力発生日から60日以後の利息(年6分)を支払わなければなりませんが(会社法117条4項)、公正な価格と認める額を支払うことができ(会社法117条5項)、かかる支払いを行った場合には、当該部分について利息の支払いを免れることになります。

執筆者

幡田宏樹のアバター 幡田宏樹 弁護士・公認会計士

取扱分野
企業法務/非上場株式の売却/支配権問題/相続(遺産分割・遺留分・遺言)/不動産(共有物分割請求・明渡対応・借地非訟)/民事案件一般


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