譲渡承認請求手続きの流れ

譲渡制限株式の譲渡請求をした場合の流れについて教えてください。

譲渡承認の必要性

株式の譲渡について会社の承認が必要とする旨の定款の定め(譲渡制限)がある場合、会社の承認を得ることができなければ、株式を譲渡しても株主名簿の書換えを請求することができないため(会社法134条)、株式を譲渡するには会社の承認を得る必要があります。

譲渡承認請求手続

株主による譲渡承認請求

株主から会社に対して株式の譲渡承認請求を行います。株主は、譲渡承認請求と併せて譲渡を承認しない場合には、会社もしくは指定買取人が株式を買い取ることを請求することができます(会社法138条1号ハ)。

譲渡の承認又は不承認の決定と株主への通知

会社は定款に定められた機関により譲渡を承認するか否かを決定することになります。定款に承認期間について特段の定めがない場合には、取締役会設置会社の場合には取締役会、取締役会非設置会社の場合には株主総会の決議によることになります。会社は請求のあった日から2週間以内に株主に通知しなければなりません。2週間以内に株主に通知しなかった場合には会社は譲渡を承認したものとみなされます。

会社による買取もしくは指定買取人による買取りのための手続き

会社が株式譲渡を不承認とした場合、会社もしくは指定買取人が株式を買い取ることの請求を受けていた場合には、会社が買い取ることもしくは指定買取人を指定しなければなりません。会社が買い取る場合には、株主総会において、会社が株式を買い取る旨及び買取る株式の数を株主総会の特別決議で決定しなければなりません(会社法309条2項1号、会社法140条1項、2項)。そして必要な供託を行ったうえで、供託を証明する書面を交付し(会社法141条2項)、会社が株式を買い取る旨等を通知する必要があります(会社法141条1項)。会社が指定買取人を指定する場合、定款に特段の定めがある場合を除き、取締役会設置会社の場合には取締役会の決議、取締役会非設置会社の場合には株主総会の特別決議(会社法309条2項1号、会社法140条4項、5項)が必要となります。そして指定買取人が必要な供託を行ったうえで、供託を証明する書面を交付し(会社法142条2項)、指定買取人として指定を受けた旨等を通知する必要があります(会社法142条1項)。会社が買い取る場合には、譲渡不承認の通知から40日以内に、指定買取人が買い取る場合には、譲渡不承認の通知から10日以内に上記の通知を行わなければ、譲渡を承認したものとみなされることになります。また、株券発行会社の場合には株主は会社もしくは指定買取人から供託の事実を証明する書面を受け取ってから1週間以内に株券を供託し、遅滞なく会社もしくは指定買取人に通知する必要があります(会社法141条3項、会社法142条3項)。株主が株券の供託を1週間以内に行わない場合には、会社もしくは指定買取人は売買契約を解除することができます(会社法141条4項、会社法142条4項)。

株主と会社(指定買取人)との協議

株式の売買価格は、会社(指定買取人)と株主との協議によって決定しますが(会社法144条1項)、この段階で会社(指定買取人)と株主との協議が成立することはあまり多くありません。

協議不成立の場合(売買価格の決定の申立)

会社(指定買取人)と株主との協議が整わないときは、裁判所に対して売買価格の決定の申立てを行うことができます(会社法144条2項)。申立てがあると商事非訟事件として扱われ、最終的に裁判所が株式の売買価格を決定することになりますが、価格の決定がなされる前に当事者間の和解により売買価格が決定されることもあります。

協議不成立の場合(売買価格の決定の申立てもない場合)

売買価格について協議が成立せず、買取りの通知から20日以内に裁判所に申し立てもない場合には、売買価格は会社(指定買取人)が行った供託額となります(会社法144条5項)。

執筆者

幡田宏樹のアバター 幡田宏樹 弁護士・公認会計士

取扱分野
企業法務/非上場株式の売却/支配権問題/相続(遺産分割・遺留分・遺言)/不動産(共有物分割請求・明渡対応・借地非訟)/民事案件一般


虎ノ門パートナーズ法律事務所の特徴

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