事案の概要
Aさんは非上場の同族会社X社の同族株主で株式(譲渡制限株式)の約30%を有していました。同族会社X社でAさんも働いていましたが、同社の経営は株式の過半数をもつAさんの兄弟であるBさんが行っていました。Aさんは同族会社X社を退職するにあたり、Bさんに株式の買取を依頼していましたが、株式の買取を断られたため相談に来られました。
解決までの流れ
AさんとBさんとの株式売却についての交渉状況からするとBさんへ売却の依頼をしても事態が進展するとは思われない状況でした。同族会社X社の株式の売却がすぐに実現できないことも想定されたため、同族会社X社の株式を保有し続けた場合のリスクについて検討したところ、Aさんに相続が発生した場合の相続税の負担が比較的重くなるということが判明しました。
そこで、Aさんと同族会社X社の株式を保有し続けることのリスク等を説明のうえ、打ち合わせを重ねた結果、株式を売却すること自体を優先するという方針を定め、Bさん以外に同族会社X社の株式を取得してくれる人を探す活動に入りました。幸いなことに、同族会社X社の経営状態はよく、事業上の協業関係を築くことを目的としたCさんに、同族会社X社が譲渡を承認することを条件として、株式を譲渡することで合意することができました。
Cさんに株主名簿の変更をするために、譲渡承認請求をしたところ、同族会社X社から譲渡を不承認とすること、Bさんが株式を取得するとの通知が届きました。Cさんに会社が譲渡を不承認としたことを説明し、Bさんと株式の売却価格について協議したところ、双方に譲歩して妥協点を見出し、株式の売却を実現することができました。
コメント
本件は、結果として、会社が譲渡を承認しなかったため、相応の価格での売却が実現できましたが、同族会社X社の株式を保有し続けるリスクをご認識されたAさんが、価格ではなく株式を売却すること自体を優先するという方針をとったため、同族会社X社の株式の取得に興味を持つ第三者を見つけることができたことがポイントであったと考えられます。